不妊のスクリーニング検査の一つである「子宮卵管造影検査」、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
年齢にもよりますが、妊活を半年、1年続けてそれでも授からなかったとき、多くの方は病院やクリニックで不妊検査を受けることを考えると思います。
その際に、一緒に受けてほしいのがこの“子宮卵管造影検査”です。
ただ、SNSやインターネットでこの“卵管造影検査”について調べると、様々な情報が出てきたり、時には不安に感じる情報が出てくることもあり、検査を躊躇されるという方もいらっしゃいます。
また病院から検査の案内をされずに、半年、1年とタイミング治療を受けていたという話も耳にします。
卵管造影検査を受けずに、タイミング治療や人工授精を繰り返すことは、場合によっては無意味な時間とお金を費やすことにもなりかねません。
だからこそ、出来るだけ早い段階で受けてほしい検査の一つです。
この記事では卵管造影検査の重要性や受けるタイミングなどについて説明していきたいと思います。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 / 生殖医学会生殖専門医
順天堂大学医学部産婦人科客員准教授
順天堂大学医学部卒業。順天堂大学産婦人科先任准教授(助教授)、順天堂大学医学部附属浦安病院リプロダクションセンター長を歴任。世界初となる公費助成の「卵子凍結保存プロジェクト(千葉県浦安市)」の責任者。2019年メディカルパーク横浜を開院。
女性の不妊の原因で一番多い「卵管障害」

卵管とは、卵巣から子宮をつなぐ管のようなものであり、
・精子の通過
・卵子がピックアップされる場
・卵子と精子が受精する場
・受精卵を子宮へ輸送する場
など、生殖に関わる非常に重要な役割を担っています。
女性の不妊の割合では、卵管が詰まっていたり、狭窄(狭くなっている)していたりする、卵管に原因のある不妊が最も多く、その割合は3割から4割になると言われています。
この卵管の詰まりや狭窄がわかるのが、“卵管造影検査”になります。
卵管に詰まりや狭窄があると、精子の通過を妨げたり、受精卵の輸送を妨げることになり、どれだけタイミング治療や人工授精を行っても妊娠に至ることは難しく、一般的には卵管に詰まりや狭窄が見られる場合は、治療の選択肢は体外受精になります。
その為“卵管造影検査”は不妊検査の中でも基本的な検査であり、出来るだけ早い段階で受けることが望ましいとされている検査の一つです。
それにも関わらず、クリニックによって卵管造影検査の扱いは様々であり、検査を受けずに気づけば、1年、2年とタイミング治療や人工授精を続けていたという人もいます。
卵管由来の不妊の原因としては、クラミジアによる感染や、子宮内膜症、手術後の癒着などがあげられます。
過去にクラミジアに感染したことがある場合や、子宮内膜症と診断されたことがある場合は、知識があれば卵管の詰まりや狭窄を疑うことが出来ますが、卵管が閉塞していても痛みも、違和感もないため、日常生活で気づくことはほとんどありません。
卵管造影検査を受けてはじめて、卵管の詰まりや狭窄や卵管周囲癒着、子宮の形態異常や筋腫ポリープなどに気づく人がほとんどです。
ただ、子宮内膜症の場合は生理痛が酷くなってくるなどの症状が現れてきます。
「妊活はまだ先…」と思っている場合でも、毎月つらい生理痛に悩んでいる場合は一度医師に相談してみましょう。
子宮内膜症を放置しておかないことは、その先の妊活においてとても大切な事になります。
クリニックによっては卵管造影検査を実施していないところも
最初のところでも書きましたが、卵管造影検査に関してはクリニックによって扱いが様々です。
卵管造影検査そのものを実施していないクリニックもあれば、医師が必要と判断した場合のみというクリニックもありますし、タイミング治療を一定期間行ってから行うクリニックや、患者側から確認して初めて検査の案内をされたというクリニックまで、本当に様々です。
ただ、卵管が詰まっていたり、狭窄していた場合は、そこまでの治療に費やした時間やお金が無意味なものになってしまうことから、やはり最初のスクリーニング検査で一緒に受けておきたい検査の一つです。
卵管造影検査はX線設備が必要で、検査にも時間がとられることから、体外受精を扱っていない、一部の婦人科などでは実施されていない場合があります。
まずは、不妊検査を受けようと考えているクリニックが卵管造影検査を行っているかどうかを確認してから、初診予約を取ることをお勧めします。
また、中には体外受精を扱っているクリニックでも卵管造影検査は行わずに体外受精へのステップアップを促すクリニックもありますので、クリニック選びには注意が必要です。
男性不妊など体外受精にステップアップする要因が他にある場合や、年齢的に最初から体外受精を望んでいる場合は別ですが、そうでなければ卵管造影検査が可能なクリニックを選ぶことをお勧めします。
卵管造影検査の流れと注意点
卵管造影検査は、月経終了後から排卵までの間に行います。
卵管造影検査は多くのクリニックが事前予約となっていることが多く、月経周期にあわせて予約を取ることになるかと思います。
予約状況によっては必ずしも受けたいと思ったタイミングで受けられるとは限りません。
初診の時に、卵管造影検査のスケジュールも一緒に組んでもらうのがお勧めです。
卵管造影検査前には、ヨード造影剤のアレルギーの有無や、甲状腺疾患の既往、などを確認します。これらに問題がある場合は、卵管造影検査を受けることが出来ません。
その場合は医師との相談になりますが、卵管通水検査やヨード造影剤を使わない方法で検査を行います。
卵管造影検査は、子宮頚管より造影剤を注入し、X線で撮影を行い卵管が通っているかどうかを確認します。
卵管が通っているかどうかの確認以外にも、卵管周囲の癒着や子宮形態異常、子宮筋腫やポリープによる子宮内腔の変形や子宮腔内癒着の確認も可能です。
また、油性の造影剤を使用して卵管造影検査を行った場合、その後の妊娠率が3ヶ月から半年の間、上昇すると言われています。
過度な期待はストレスになるのでよくありませんが、卵管造影検査後は出来るだけ多く性行為のタイミングをとるなど積極的に妊活に取り組むことをお勧めします。
検査終了後はまれに少量の出血が見られるため、生理用ナプキンを用意しておくと安心です。
検査終了後、痛みや出血など何か気になることがある場合は、医師や看護師など確認するようにしましょう。
卵管造影検査自体はそこまで時間のかかる検査ではありませんし、検査後に安静が必要な検査でもありません。
午前中の検査であれば、午後から仕事にいくことも可能です。
卵管造影検査は基本、保険診療の中で行える検査です。費用は5000円程度で、追加で抗生剤や検査に使う消耗品費用がかかる場合があります。
こちらも気になる方は事前に受付などで確認しておくといいでしょう。
卵管造影検査は痛いって本当?

卵管造影検査というと、「卵管造影検査って痛いんですよね」と聞かれることも少なくありません。また「痛い」という話を周りから聞いて、検査を躊躇してしまう人もいるぐらいです。
では、卵管造影検査は痛い検査なのでしょうか?
これは正直、その人によるとしか答えられないのですが、全く痛みを感じずに検査を終えられる方ももちろんたくさんいらっしゃいます。
卵管が詰まっていたり、卵管が狭窄している場合はどうしても痛みを感じてしまいます。
また、造影剤の注入方法でも痛みが変わってくるようですので、痛みにあまり強くない方は事前に医師に相談しておきましょう。
インターネットやSNSの体験談では「卵管造影検査で痛い思いをした」という情報が多くなります。
また、「卵管造影検査 痛い」という検索ワードで検索すると、どうしても「卵管造影検査は痛かった」という情報ばかりが目につくことになってしまいます。
造影剤、挿入時などに痛みを軽減するコツの一つが、出来るだけリラックスをするという事です。
緊張していると、装具や造影剤の挿入時に痛みを余計に感じてしまいます。
卵管造影検査前はあまり様々な情報を調べすぎずに、出来る限りリラックスして検査を受けるようにしてしみましょう。
不妊検査のスクリーニング検査として、卵管造影検査はとても大切な検査の一つです。
痛みに対する恐怖もあるでしょうが、出来るだけ受けるようにしましょう。
また、どのように検査が進むかわからないから怖いという話もよく耳にします。
検査に関しては、気になる事や不安な事がある場合は、一人で悩まずに医師や看護師など医療スタッフに確認して、不安を取り除くようにしていきましょう。

参考書籍
臨床婦人科産科(第70巻 第4号)不妊・不育症診療 パーフェクトガイド 2016年4月20日発行 医学書院

