そろそろクリニックに行った方がいいかな?と考えた時に、婦人科か不妊専門クリニックどちらに通院したらいいのか?違いは?と迷われる人も少なくありません。この記事では婦人科と不妊専門クリニックの違いや婦人科で不妊治療を始める際の注意点について解説していきます。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 / 生殖医学会生殖専門医
順天堂大学医学部産婦人科客員准教授
順天堂大学医学部卒業。順天堂大学産婦人科先任准教授(助教授)、順天堂大学医学部附属浦安病院リプロダクションセンター長を歴任。世界初となる公費助成の「卵子凍結保存プロジェクト(千葉県浦安市)」の責任者。2019年メディカルパーク横浜を開院。
クリニックによって違う「不妊治療」

不妊治療を行っているクリニックと聞いて、みなさんはどのようなクリニックを思い浮かべられるでしょうか?
不妊治療と一言で言っても、様々なクリニックや病院で治療が行われています。
また、その治療内容もタイミング指導だけのクリニックもあれば、体外受精まで可能なクリニックと様々です。
さらに体外受精と言っても、ここでも方針は様々です。
体外受精の方針の違いに関してはこちらの記事もぜひ参考にしてみてください
クリニックを選ぶ際に大切なポイントの一つが、この治療内容の違いを理解してクリニックを選ぶということです。
この点を知らずにクリニックを選ぶと、本当は体外受精でないと妊娠は難しいのに、長い期間、タイミング治療や人工授精に時間を費やしたという事にもなりかねません。
とりあえず「不妊治療 お住いの地域」と検索して、近くのクリニックに通えばOKというわけにはいかないのが不妊治療のクリニック選びなのです。
不妊治療を行っているクリニックの種類と特徴
ここでは簡単にクリニックの種類と行われている治療内容についてお伝えしていきたいと思います。
≪一般婦人科≫
タイミング治療もしくは人工授精までしか行っていない。
男性不妊検査や卵管造影検査が出来ないクリニックもある。
排卵誘発の方法などもあまりバリエーションがないところが多い。
≪産科併設の不妊外来≫
クリニックによって体外受精まで可能なクリニックもあれば、タイミング治療や人工授精までのところもある。
検査内容や排卵誘発の選択肢などもクリニックによって違う。
待合が妊婦さんや子供と一緒になることがある。
≪不妊専門クリニック/生殖医療センター/リプロダクションセンター≫
不妊治療だけを専門に扱っており、体外受精まで治療が可能。
クリニックによってはタイミング治療や人工授精は行わず、体外受精しか行っていない場合もある。
検査の種類や、排卵誘発・移植の方法など比較的選択肢が多い(ただし医師の方針に大きく影響されやすい)
クリニックを選ぶ際に、個人病院か、総合病院か、大学病院かどれを選べばいいのだろうかと迷われる人もいますが、不妊治療に関しては病院の規模はクリニック選びの際にそこまで考慮にいれる必要はありません。
大学病院よりも個人クリニックの方が、技術力が高い場合もあります。
一般婦人科から不妊治療をスタートする場合の注意点
体外受精へのステップアップや、治療の選択肢の多さなどから、クリニックを選ぶ際は基本的には体外受精が可能な不妊専門クリニックをお勧めしています。
とはいえ、必ずしも通いやすい範囲に体外受精まで可能なクリニックがあるとは限りません。特に地方となると、体外受精まで可能なクリニックまで片道2時間以上かかってしまうこともあり、最初の通院のハードルがあがってしまいます。
そのような場合は、まずは近くの不妊相談のある婦人科で不妊治療をスタートさせるのも一つの方法です。
また、近くに体外受精まで可能な不妊専門クリニックはあるものの、今まで生理不順や生理痛などでお世話になっていたかかりつけのクリニックがあるから、まずはそこで不妊治療をスタートさせたいという場合もあるでしょう。
このように、体外受精が出来ない一般婦人科で不妊治療をスタートさせる場合に、気を付けてほしいポイントがあります。
① 卵管造影検査と男性不妊検査が可能か
卵管が詰まっていたり、精子の数や運動率、精子の形態に問題がある場合は、タイミング治療や人工授精での妊娠が難しい場合があります。
卵管造影検査や男性不妊検査で、卵管の詰まりや、精子の状態を知ることが出来るため、不妊治療を考えた際に最初に行う検査になります。
ただし、婦人科クリニックの場合は卵管造影検査が出来なかったり、男性不妊検査を行っていない場合もあります。
その場合は、別のクリニックに転院するか、卵管造影検査と男性不妊検査だけ他のクリニックで受ける必要があります。
後々、卵管閉塞や男性不妊がわかって、時間を無駄にしたと思わなくてもいいように、一般婦人科で不妊治療をスタートさせる場合でも、必ず卵管造影検査と男性不妊検査は受けるようにしましょう。
② スクリーニング検査である血液検査をきちんとしてくれるか?
不妊治療を考えて、最初にクリニックで行われるのが不妊スクリーニング検査です。
不妊スクリーニング検査についてはこちらの記事を参考にしてみてください。
不妊スクリーニング検査の流れと注意点(女性編)
しかし一般婦人科での不妊治療の場合、これらの血液検査がきちんと行われていないクリニックもあります。
排卵日近くに1回、もしくは2回程度卵胞の発育状態を確認されて、「後、数日内に排卵するから、タイミング取ってください」と言われるだけ、というクリニックもあります。
血液検査の場合は、採血をクリニックで行い、検査は外部の検査センターで行うため、設備が必要な卵管造影検査とは違い、一般の婦人科でも検査は可能です。
血液検査すら十分に行っていないような不妊外来であれば転院を考えた方がいいでしょう。
③ 人工授精の際に精液の調整を行っているか?
人工授精を行う場合は、精液中から出来る限り不純物を取り除き、純度を高めた濃縮された精液を使って人工授精を行います。
ただ、一般婦人科の場合はこれらの工程を行わないで人工授精を行っているところもあるようです。
一般婦人科で人工授精を行う場合は、ステップアップ前に精液の調整方法について確認しておきましょう。
また、精液の取り扱い(採取から運搬の時間や温度管理について)についても事前にきちんと説明があるクリニックで治療を行うことをお勧めします。
これらに不安な点がある場合は、人工授精へステップアップ時に不妊専門のクリニックに転院することも視野にいれておいてください。
④ だらだらと同じ治療を繰り返していないか?
一般婦人科での不妊治療の場合、専門の不妊クリニックほど治療の選択肢がない場合があります。
その為、どうしても同じ治療を長期間繰り返してしまうことが少なくありません。
年齢にもよりますが、タイミング治療の目安は半年から1年、人工授精の目安は、3回から6回程度です。
これ以上同じ治療を繰り返している場合は、そろそろ不妊専門クリニックへの転院を考えるタイミングかもしれません。
一般婦人科で不妊治療を行う場合は、転院するタイミングも考えておく必要があります。
スクリーニング検査では特に問題がなくても、体外受精をしてはじめて不妊の原因がわかる場合もあります。
35歳を過ぎていたら最初から不妊専門クリニックを

不妊治療による妊娠率は35歳あたりから低下していきます。
その為35歳以上の場合は、婦人科での不妊外来より、最初から不妊専門クリニックを受診したほうがいい場合があります。
また、婦人科の不妊外来から不妊治療を始めた場合でも、半年から1年以内ぐらいで不妊専門クリニックへ転院することを考えておいたほうがいいでしょう。
さらに38歳以上の場合は、最初から体外受精を視野にいれて、体外受精が可能な不妊専門クリニックを受診されることをお勧めします。
いかがでしたでしょうか?
不妊治療を行っているクリニックと一言で言っても、様々なクリニックがあります。
基本的には体外受精まで可能な不妊クリニックをお勧めしていますが、婦人科の不妊外来で治療をスタートされる方もいるかと思います。
その際は、上で記載したポイントを参考にクリニックを選んだり、転院のタイミングを考えてみてください。
